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ゲームトレイラーシナリオ
ハンターと呼ばれる賞金稼ぎたちが集い、戦う巨大なアリーナ(闘技場)。少女はどこから来たのか、ここは一体何処なのか。
※音声が出るのでご注意下さい。 ※12分あるので1.25倍速がお勧め。
(Scene.1)
時は2033年
数千人は収容できそうな巨大アリーナには多くの観客が訪れていた。
入口には『BOUNTY HUNTERS WORLD CHAMPIONSHIP』のトーナメント表が掲示されており、大勢の観客が興奮を身に包んで続々と会場入りしている。
アリーナを埋め尽くすほど大勢の観客で満席となった会場では、ハンターたちの登場を今か今かと待ちわびる空気で包まれていた。
まだ対戦が始まる前にも関わらず、既に会場内は熱気に満ちており四方八方から止む事のない歓声が飛び交っていた。
―――
アリーナの丁度中央に位置する台座は観客席からは離れており、台座の部分だけが高く、どの観客席から見ても見やすい造りになっている。
そして台座には、人よりも遥かに大きく、ごつごつとした突起物のある薄汚れたカプセルが置いてあった。
頑丈そうにも見えるカプセルの素材は、一部透明になっているようだが、中に何が入っているのかは確認する事は出来ない。
カプセルから少し離れた位置には、”それ”を落とす為なのか床に“穴”が開いているエリアがあった。
“穴”の中はまるで夜がそこに結晶化しているかのように暗く、まるで異空間と繋がっているような錯覚を覚える。
台座に置かれているカプセルを挟むように対峙しているのは、10代後半のまだあどけなさが残る“ひとりの少女”と、“屈強な男”。
この2人が、観客が登場を待ちわびていたバトルアリーナの主役、バウンティハンターだった。
ハンター2人の腕には、巨大な(武器のような)ガントレットが装着されていた。
腕の2倍はある重量感のあるガントレットは、レトロ感を感じるメカで構成されていて、少女が持つ“それ”は、男のガントレットとはデザインも形も違う。
鍛え上げられた身体を持つ男であれば無理なく扱える事は想像できるが、小柄で華奢な少女があの巨大なガントレットを意にも介さず扱っている様は、現実離れして見える。
だが、この世界では、バウンティハンターと名乗る者は、体格や性別に関係なく、“何か特別な力”を手にする事が出来るようだ。
「しかし…いつ見てもでっけぇなぁ」
「私、生で見たのは今日が初めて見たけど…思った以上の大きさなのね…」
頭上を見上げていた観客が呟く。
観客が息を呑むのも無理はない。
頭上高くには、まるでアリーナを覆い隠すほど巨大なクレーンマシンがそびえたっており、その中央からは、何かを掴み上げるための3つに分かれた“巨大な爪“がぶら下がっていた。
クレーンマシンから吊るされた“巨大な爪”は微動だにせず、誰かに操縦されるのを待っているようだ。
見る者を圧倒する迫力である。
(Scene.2)
対峙した2人のバウンティハンターは、微動だにしないまま立っている。
真剣な眼差しを向ける少女とは相反し、余裕の表情を浮かべる男は、絶対的な自信があるようにも見える。
少女の額に浮かび上がる汗が肌を伝った。
ざわついていた会場の歓声は、より一層激しくなっていき、至る所からふたりを応援する声が飛び交う。
ゲームが始まるカウントが始まる。
少女の額から流れた汗が線を描くように伝う。
そして、そのままゆっくりとバトルアリーナの床へと滴り落ちた。
(Scene.3)
ここは2023年の日本に何処かにあるゲームセンター。
屈指の規模感を誇るクレーンゲーム専用ゲームセンターであるこの施設は、所狭しとゲームが設置されており、毎日子ども連れの家族やカップルで賑わっていた。
「ねぇ、パパ~!」
「ん?どうした、さくら」
「あそこの“ぬいぐるみ”が欲しいっ!」
「おっけぇー!パパに任せろ!」
「やったぁ!頑張ってね、パパ!」
ひと組の親子がいた。
娘のためにゲームに挑戦しようとする父親と、まだ幼い少女だ。
少女の名前は“さくら”
クレーンゲームが大好きな小学3年生。
父親はコインを入れてプレイを始めた。
ボタンを操作し、ぬいぐるみの真上にアームを持ってくると、アームはぬいぐるみに向かって下降していく。
「よーし!良い感じだぞ!」
「頑張ってパパ!」
このゲームセンターでは、子供から大人まで時間を忘れて楽しむ事が出来る。
失敗をしても楽しめる。
獲れそうで獲れない…これがクレーンゲームの醍醐味ともいえるだろう。
1回で獲れるほど簡単だと逆につまらない。
ショーケースのお目当ての“モノ“を持ち上げ、少しずつ移動させ、途中で落としては悔しがり、失敗しては繰り返すとう景品を獲れるまでの苦労があるからこそ獲得できた時の喜びは大きいのだ。
(Scene.4)
一方、アリーナでは男の両腕に装着されている巨大なガントレットが、闘技場の頭上に設置されたこれまた巨大なクレーンマシンと連動して動いていた。
「よーーく見てろよ小娘!あのカプセルはオレノもんだ!残念だがおれは子ども相手だろうと容赦はしねぇ!手加減一切なしで行くからなぁ!」
「…」
「チッ…!ガキが!清ました面しやがって…気に入らねぇ…ッ!」
煽り立ててもなお表情を変えない少女に、男は苛立ちながら吐き捨てるように言った。
実はこのガントレットはコントローラーの役割を担っているようで、男が慣れた手つきでクレーンマシンを操縦していくと、カプセルは軋みを上げてゆっくりと持ち上がっていった。
「よぉーし!貰ったぞォ!!」
3本の爪ががっちりとカプセルを掴んだまま移動していく。
途中で落ちる気配はない。
会場の誰もが男の勝利を疑わなかった。
――だが、あと少しで勝利に手が届きそうな刹那、
無残にもカプセルは爪からするりと落ちてしまった。
「チッ!あともう少しだったのに…まぁ心配はいらんだろう」
悔しそうな表情が一変し、男は不敵に笑った。
少女も失敗をするだろう――男はそう高を括っていた。
男はまだ知らなかった。
この後、起こる展開を――。
(Scene.5)
次は少女のターン。
少女は男同様に武器を操作すると、アームを移動させていく。
慎重にアームを動かしながらカプセルの真上にまで持ってくると、アームはカプセルに向かって降下していった。
アームによって持ち上げられたカプセルは、“穴”に向かって少しずつ距離を縮めていく。しかし、あと少しと言う所でカプセルは落ちてしまった。
ターン制がルールのため、1回づつ交互にプレイをする決まりになっている。
少女がカプセルを落としてしまったのは、穴のほんの少し手前。
次は男のターンだ。
このままだと確実にカプセルは獲られて負けてしまう。
カプセルを落としてしまったアームは、所定の位置に戻るために移動を始めていた。
「ククッ…次はおれの番だな」
勝利を確信した男が少女に言い放った。
ここで、少女はスマートフォンのアプリで何か操作をした。
「!!」
その瞬間、画面から光る球体が勢いよく飛び出て来た。
球体は光を纏いながら、少女の腕に装着されたガントレットへと向かい、スロットに嵌まった。
少女の行動に、対峙していた男が目を見開く。
一部始終を見ていた観客達もざわめき始めた。
(Scene.6)
少女の顔に笑みがこぼれる。
通常の対戦では、クレーンゲームを1プレイずつ交互に行っていくのが決まりだ。
だが、特殊効果が発動した場合は例外となる。
この球体は"BOOST NFT”と呼ばれ、ガントレットと同期した事で得られる特殊効果を発動できる。
今回、少女が発動させたのは「対戦相手のターンの無効化」である。
焦りと共に目を見開く男とは裏腹に、今度は少女が勝利の笑みを浮かべた。
ゲームは再び少女のターンとなった。
少女はガントレットで操縦し、アームを移動させていく。
カプセルの真上に移動したアームは、一直線に降下すると、カプセルを掴み上げる。
アームはがっちりとカプセルを掴んだまま、途中で落ちる事無く“穴”へと落下していった。
「そ、そんな…嘘だ…おれが負けたというのか…」
膝から崩れ落ちた男は、呆然としながら少女を見る。
少女は男に応えるように微笑んだ。
(Scene.7)
“winner SAKURA“
会場内のリーダーボードに少女のこの世界での名前が表示された。
獲得したカプセルは、重量感があるのを感じさせない程あっという間に少女のスマートフォンに吸い込まれていった。
少女がスマートフォンの画面に視線を落とす
画面に表示された「BOUNTY HUNTERS アプリ」には、以前、少女が獲得してきたカプセル(BOOST NFT)が並んでおり、その隣へ先ほど獲得したものも追加された。
「――パパ、勝ったよ」
嬉しそうに少女は微笑んだ。
(Scene.8)
「クソ…クソッ!クソッ!…おれが負けるなんて…」
地面に拳を叩きつけながら男は悔しそうに呟いた。
「…見た目には騙されない事ね」
「なんだと!?」
「この対戦型クレーンゲームで勝利に必要なのは…戦略とテクニックだよ」
「くっ…!」
「あなたはわたし相手に随分と余裕だったみたいだけど、その気持ちの余裕が初歩的なミスを生んでしまった…操作が少し雑だった事――あなたは気付いてないでしょう?」
「っ…!!」
「誰が相手でも気を抜かない方がいい。それがこのゲームよ」
「…」
「また戦える時があれば――その時はよろしくね」
少女はスマートフォンを仕舞うと、男の傍らを通り過ぎ、バトルアリーナを後にした。
「――ふぅ…」
お気に入りのポスターや、かわいい“ぬいぐるみ”が飾られている部屋で、大きく息を吐く。
少女はVRゴーグルを外すと、机の上にそっと置いた。
ようやく戻ってきた現実世界に安堵しながら、体を伸ばすために背伸びをした。
目を閉じれば、瞼の裏に広がるのは少し前まで自分がいた大歓声に包まれるバトルアリーナの光景。
思い出しただけでも体の底からあの時の高揚感が湧き上がってくる。
もっと色んなバウンティハンターと勝負がしたい。
もっとクレーンゲームがしたい!
もっと!
もっと!!
「―――これだからバウンティハンターはやめられないんだ」
… 続